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生きていると執拗に苦しみを味わう。どうにもこうにも上手くいかないのが普通の人生で、もし上手く望みが実現したとしても「こんなはずじゃなかったのに」という思いに苦しめられることになる。金や名誉を手に入れて感じる虚しさは、ない苦しみと違って持っていくところがない分強烈な苦しさを伴う。

苦しみの果てに人によっては死を望むのだが、死によって解放されることはない。執着を持ったまま死んでしまうとまた生まれてきてしまうためだ。「今度こそ幸せな人生を」という思いが、あなたをまたこの世界に投げ込む。そしてまた失意のうちに死を迎え、また世界に誕生し、ということを幾度も幾度も繰り返してきたのだ。

苦しみの連鎖、いわゆる輪廻からの解放はむしろ生きている時に起きる。自分が本当には何であるかを思い出すこと、個別分離の夢から覚め、この世界の幻想性を十全に体得したとき、あなたにとって世界は無意味になり、あなたという個人も無意味になり、苦しみは終わりを迎える。